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ここ数年、美に対するいろいろな情報が氾濫しています。これらにより、日に日に美への欲求が高まってきています。胸の大きさ、足の太さなどの体型は当然のこと、次には目の形、鼻の形、顎のラインへ、そして最近は、歯並び、歯の色、スマイルラインなどの口元へとより細かい部位への美が要求されています。しかし、現代人のお口の状態はこれらの欲求とはアンバランスな方向、逆の方向へと進んでいます。つまり体はスリムに、顎も細くスッキリしてきたのですが、その反面、歯並びはガタガタになってきています。
この項では、特に歯並びを治す治療法、矯正治療(歯列矯正)と審美歯科治療(セラミックスクラウン法)について、我々歯科医の立場から最新の技術、およびそれぞれの治療法の利点、問題点を解説します。口元の悩みを解決するための一助となればと思います。

では最初に矯正治療についてお話します。まずお聞きしたいのは、「矯正治療は子供の頃しかできない」と勘違いされていませんか? 矯正治療には年齢は関係ありません。子供と大人では治療方法が違うだけで、いつからでも何歳からでも治療は始められます。
さて矯正治療というのは皆さんご存知の通り、歯の表面に器具や装置を付けて歯を動かす治療法です。何と言っても一番の利点は歯を削らずに治療することでしょう。自分の歯をきれいに並べ直すことで一番自然な感じで歯並びが良くなります。歯並びを治すことは審美的な面だけでなく、ムシ歯や歯槽膿漏にもなりにくくなるためお口全体の健康につながります。
問題点についてお話しましょう。今まで矯正治療の大きな問題点であった歯の表面に付ける銀色の器具は、今では透明や白いものに変わってきています。ですから治療中の見た目の悪さも改善されてきています。最近ではリンガル矯正(舌側矯正)と呼ばれる歯の裏側に器具を付ける特殊な治療法も開発されています。この治療法であれば矯正治療をしていること自体がわかりません。ただ前述のように治療中の審美的な問題は解決されてきていますが、どうしても治療の期間が年単位でかかってしまうということが解決されない問題として残っています。これに関してはまだまだ良い解決策はありません。しかし、歯並びの状態によっては以前より短期間でできる方法も開発されました。それは矯正治療における最新の治療、インプラント矯正です。これは歯のない所に人工的に歯を作るインプラント治療を矯正治療に応用したものです。これにより今まで顎の外側に矯正装置(顎外治療装置)をつけなければならないような場合、外科的な矯正治療が必要な場合などの治療が比較的簡単に行えるようになりました。

次は審美歯科治療についてです。審美歯科治療は歯並びの悪い所、歯の色の悪い所、銀歯を白くするなどセラミックス治療やホワイトニングなどでよりきれいな口元を創る治療です。
この治療法は歯並びの悪い所を削ってセラミックスの冠(クラウン)を被せることにより、きれいに並べていきます。また前歯の間に隙間がある場合などは歯の表面を一層(700ミクロン)削ってセラミックスの薄いシェルを貼るラミネートベニア法を行います。
これらの治療は矯正治療ではどうすることもできない時間的な問題を解決できる唯一の方法です。ですから最大の利点は早くきれいに治るということです。
ただし、もともと歯のあった場所(生えている場所)は変らないので歯並びを改善するにも限界があります。そのため奥に引っ込んでいる歯などあまりにも歯並びが悪い場合は神経を抜いたり、抜歯が必要になってきます。これらのことが審美歯科治療の問題点と言えるでしょう。
この他の問題点には、患者さんと先生の間で歯の色や歯の並びなど治療後のイメージが違っていること、冠を被せるなどの治療後にその周囲の歯茎の色が黒ずんでくることなどがあります。
具体的には前者の場合、「思っていたのと違った」、「こんな風になると思わなかった」などという問題です。これに対して当センターでは治療を開始する前に患者さんのお口の型を採り、予め治療後の状態を模型上でシュミレーション(ブループリントテクニック)をし、患者さんと相談します。また色合わせも歯の写真を撮ったり、歯科技工士(冠などを作る人)に直接、医院まで色合わせに来てもらったりすることで対処しています。これらにより患者さんとのイメージの食い違いはかなりなくなります。
後者の問題の原因は、冠や土台に使用されている金属にあります。ですから、当センターでは土台や冠に金属を使わないオールセラミックスクラウン法で治療しています。治療上どうしても金属を使う必要のある時は歯茎を黒ずませる成分の入っていない最高級の金属を使用するようにしています。

どちらの治療法も歯並びを治療するという意味では同じです。歯並びを治す治療の目的は審美的な問題だけではありません。この治療により、「大きなお口を開けて笑えない」、「人前で話すのが嫌」など口元に対するコンプレックスをなくし、審美的にも優れ精神的にも安定した素敵な笑顔を取り戻すことができればと思っています。
どちらの治療法を選ぶかはお口の中の状態や患者さんの現在おかれている環境だと思います。例えば結婚式が近いなど、どうしても早く治療を終わらなければならない理由があれば矯正治療を行うことは難しくなります。
これらいろいろな状況に応じて治療を進めなければなりません。このように歯並びの治療一つにおいても、歯科医に患者さん自身のかなり多くの情報を話さなくてはなりません。現在、歯科医院は星の数ほどありますが、それらの状況に対して親身に相談にのってくださる歯科医はどれだけいるでしょうか。
インターネットによりいろいろな情報が簡単に手に入るようになった現在でもまだまだ医療に関しては情報が足りないと思います。この項、この本がその手助けになれば幸いです。
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